ホラー、オカルトなど、超常現象を扱った映画は多数あります。人を恐怖の中に陥れコワさを与えるための映画です。しかし、心底コワいと思わないのは、それがありえない架空の物語だと分かっているから。一種のアトラクションのようなもの。

その場で、「キャー」っと叫んでストレスを発散し、映画が終わったら、食事をしながら「怖かったね」と笑顔で会話できる作り物。最近では、コワさよりも、リアルな痛みを見せたり、グロさを見せたりと、ヴィジュアルにこだわった映画が多くなりました。

今回、ご紹介する映画『ヴィジット』は、本当にコワいです。映画を観ている間、思わず「コワい、コワい」を連発してしまいます。できれば、お一人で観ていただくことをお勧めします。

監督は『シックス・センス』『ヴィレッジ』のナイト・シャラマン。『シックス・センス』のできが良すぎたせいで、その後の作品が常に比較され、不発続きだったシャラマン監督が、自ら原点回帰を掲げて臨んだ作品です。

話題づくりが得意なシャラマン監督、公開前の予告編映像で自身がラストに登場するという異例のもの。そして、メッセージを送るという入れ込みようでした。そのメッセージは「あなたはすでにだまされている」というもの。いやでも期待が高まります。

お気に入りの俳優を使いたがるシャラマン監督ですが、今作の出演者は日本ではほぼ無名の人たちばかりです。それも出演者数がとても少ないのです。

ただし、プロデューサーが『パラノーマル・アクティビティ』『インシディアス』などのホラー作品を得意とするジェイソン・ブラム。シャラマン監督との初タッグで組んだ本格的スリラーとなりました。

撮影方法も特殊なものでした。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のような、演者が持つビデオ・カメラが物語の進行を進めていく手法ですので、よりリアルに恐怖を体験することができます。

ストーリーは、シングル・マザーの母のドキュメンタリーを撮影するため、姉弟がビデオ・カメラを持って母の故郷へ行くというものです。その撮影している視線をそのまま観客が観ることになります。

休暇を利用して祖父母のペンシルベニア州メインビルに向かう姉弟。しかし、母は若いころ家出をした立場なので、二人は祖父母のことを全く知らない。姉弟はビデオとパソコンを持ち、母の生い立ちを探る旅に出るのです。

駅に迎えに来てくれた優しい祖父と祖母。携帯もつながらない田舎町の一週間が始まります。母の生家に着いた二人は、祖父母から3つの約束を与えられます。1つ目は【楽しい時間を過ごすこと】、2つ目は【好きなものは遠慮なく食べること】。そして、3つ目は【夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと】。

やがて祖父母のおかしな言動が気になり始める二人。宇宙人を見たという祖父。暗闇さんがいるという祖母…。何かがおかしいのだが、スカイプで連絡をとる母は「歳のせいだから」というのですが…。

本当にコワいです。二人の子供が、抵抗できそうで、できないジレンマ。罵りたい気持ちを抑えている我慢が、観ている側にも伝わり、手を差し伸べたくなるのですが、どうしようもない焦燥感を味わうことになります。そして、どんでん返しを迎えこの映画の本当のコワさ知ることになります。

また、正直なところ差別用語がたくさん出そうな場面もあるのですが、決してそういった言葉を使わないところも現代の映画らしいところです。