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題名が長い!『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』

日本で公開されるコメディ映画は、なぜか放題が長いのです。その意図は分かりませんが、今作も例外ではありません。そして、シリーズ3作品ありますが、【!】マークが、2作目は2つ、3作目は3つあるという凝りようです。

映画や小説、マンガの中には、「伏線の回収」というルールがあります。ヘタな製作者、作者は、大風呂敷を広げるだけ広げて、点をばらまくだけばらまいておきながら、回収をし忘れ、そのルールを守り切れずに炎上することもあります。

この映画は、その「伏線の回収」というルールをパーフェクトに守っています。よくもこれだけバラバラの点を、短時間の中で1本の線としたものだと感動さえします。一つ一つの点の真相が分かるたびに、どんでん返しが行われ綺麗な1本の線が出来上がるのをご堪能ください。

低予算の上、ギャラの高い俳優が出演したわけでもないのですが、北米興行収入2週間連続1位を達成し、2009年の北米興行収入6位を達成した大ヒット作となりました。アメリカ映画史上コメディ映画としての最高額を売り上げを達成しました。

監督はコメディ映画を得意とするトッド・フィリップス。この作品でゴールデングローブ作品賞を受賞します。シリーズを通して監督を務めています。

主演は、当時はまだ無名に近い、ブラッドレイ・クーパー、エド・ヘルムズ、ザック・ガリフィアナキス。3人はこの映画をきっかけにブレイク。特にブラッドレイ・クーパーはまたたく間に大スターの仲間入りを果たしました。

ザック・ガリフィアナキスにいたっては、演技なのか狂気なのか、アクが強すぎて、他の作品で観ても、この役のイメージが抜け出せなさそうです。

四人の仲間が結婚式を迎える前を男同士で祝うのだが、とんでもない二日酔いを起こし、おまけに新郎となる仲間が行方不明になってしまうというドタバタ劇。

二日後に友人タグの結婚式を控えた教師のフィル(ブラッドレイ・クーパー)、歯科医のスチュ(エド・ヘルムズ)は、タグの義理の弟アランと共に、ラスベガスで男だけの結婚前夜祭を過ごすことになります。そして、四人は永遠の友情を誓って、高級ホテルの屋上で酒盛りを始めるのでした。

翌朝、ひどい二日酔いの状態で、ホテルの部屋の中で目を覚まします。部屋の中には、本物の生きたトラ、そして見知らぬ赤ん坊、そして、歯科医のスチュは前歯が抜けた状態。前夜の記憶はまったくないのです。おまけに新郎のタグが行方不明に…。

三人は二日酔いの状態でタグを探そうとするのだが、手掛かりも記憶もありません。ポケットにあったのは、病院の診察券?三人はそれを手掛かりに捜査を始めるのですが、次から次へと身に覚えのない人物や事件に巻き込まれていくのです。

いったい新郎タグはどこに?そして、昨晩、自分たちの身に何が起きたのか?トラはどこから来たのか、赤ん坊はだれの子供なのか、スチュはどうして歯が抜けているのか?しかし、3人が行動する度にさらに【点】は増えていくのですが、ビックリするほど上手に伏線が回収されます。

この後、続編2作が製作されましたが、今作の衝撃を超えることはできなかったようです。

何がどんでん返しか?タイトル通りなのがどんでん返し『ゲーム』

どんでん返し映画のご紹介にしては、もしかしたら、人によっては、どんでん返しがないかもしれない映画です。人によってというのは、心が素直な方にとっては、この映画はどんでん返しになっていないと感じるかもしれないからです。

この映画を観ている最中、何の疑問もなくスルーして観ることができる方は、心が素直な方といえるかもしれません。しかし、どんでん返しを味わえずに面白みが足りないかもしれません。

逆に、ストーリーに疑いを持ってしまった方は、素直な心ではないのかもしれませんが、どんでん返しに愕然とするかもしれません。ご自身がどちらのタイプか、お試しください。

なんとも奇妙な映画です。弟からの誘いで軽い気持ちでゲームに参加してしまった富豪の男が体験する危険な不条理。ゲームなのか、それとも罠なのか、主人公とともに不条理を味わってください。

この奇妙な映画をつくった監督は、鬼才とも、奇才とも言われる才能を持ったデヴィッド・フィンチャー。『セブン』『ファイト・クラブ』『ゴーン・ガール』などで、観た者の気持ちを負の世界に引きずり込むことを得意としています。

主演は、『ウォール街』シリーズ、『氷の微笑』『アメリカン・プレジデント』など、どのような役も難なくこなす名優マイケル・ダクラス。大富豪役は演じているというよりも、まるで素の姿のように板についています。

共演はこちらも名優です。『アイ・アム・サム』でアカデミー主演男優賞ノミネート、『ミスティック・リバー』でアカデミー主演男優賞を受賞したショー・ペン。マドンナの元夫としても有名です。

1997年の作品。今から20年前の映画ですが、この二人の名優が兄弟役で共演していたというのは、今思えばすごいことだと改めて感じます。

実業家のニコラス(マイケル・ダクラス)は遺産を引き継いだ富豪であり、投資家である。彼は大豪邸に一人で住み、娯楽とは無縁の生活を送っていました。ニコラスは48歳の誕生日を迎えます。この年齢は、父が自殺した年齢でした。

弟のコンラッド(ショーン・ペン)と久しぶりに再会したニコラスは、誕生日プレゼントとして、CRSという会社が主催する【ゲーム】の紹介状を贈られます。娯楽とは無縁のニコラスは、最初は相手にはしていませんでした。

ニコラスは偶然見かけたCRS社に立ち寄ります。対応した男は、「ゲームを体験することを売っている」と話します。料金もかからない、キャンセルもできるという説明をされ、身体検査、心理テストを受けることになります。

その夜、いつものバーに行くと、客の老人がCRSの話をしています。その老人は、何回もそのゲームに参加したいといい、意味深な聖書の言葉を残すのでした。

そして、番号を教えていないはずの携帯電話にCRSから電話が掛ってきます。担当の女性はこう言います。「検査の結果は不合格なので、この話はなかったことにしてください」と…。

しかし、その直後から彼の身の回りで奇妙なことが起き始めるのです。自宅の玄関前には、ピエロの人形が転がっています。その場所は、父親が投身自殺をした場所だったのです。ニコラスは、ピエロの人形を家の中に持ち込み…。

アナタは、観ている最中、すべてを観終わってから、どのように感じるのでしょうか。不条理という言葉を心底感じてご覧ください。

宇宙系都市伝説はこの映画から生まれた?『カプリコン・1』

まず思い出してほしいのはアポロ11号が月面に着陸したのは1969年ということです。そして、40年経った今でも、「あのアポロ計画はねつ造である!」「人類は月面には行っていない!」という都市伝説があります。なぜそのような都市伝説が流れたのかは、この映画に一因があるかもしれません。

この映画をご存知の方は少ないかもしれません。1977年の映画です。今から50年近く前の映画です。当時はまだ『都市伝説』という言葉はありませんでした。しかし、都市伝説界なるものがあるとすれば、この映画は一石を投じた作品であることは間違いありません。

そして、この映画のせいでNASAは隠ぺい体質で、数多くの秘密の隠している危険な組織であるというイメージを植え付けられてしまったのかもしれません。ある意味映画の影響力の怖さを知ることができる作品といえます。

タイトルの『カプリコン・1』とは、火星有人ロケットの名称です。一見SF映画のようですが、実は全くSFの要素はないのです。ジャンルはいったい何にすればいいのでしょうか?しいて言えば、政治又は社会問題でしょうか。テーマは日本でも社会的な問題になることがある『やらせ』です。

『2010』『エンド・オブ・デイズ』などSF、オカルト系の作品が多い、ピーター・ハイアムズが監督を務めます。監督と並行し、脚本、撮影もこなすマルチな才能の持ち主です。

『オーシャンズ』シリーズのエリオット・グールド、『悪魔の棲む家』のジェームス・ブローリン、元アメフト選手で役者よりも殺人容疑で有名になったO.J.シンプソンなどが出演しています。

世界初の有人火星ロケット【カプリコン・1】を打ち上げることになったアメリカ合衆国。機は、無事火星着陸をし、探査をしたのだが、帰還の際、大気圏再突入で事故に遭い爆破、乗組員は全員死亡してしまった…はずだったのです。

300億という巨額の予算を投じたプロジェクト。初の火星有人ロケット【カプリコン・1】は、発射5分前、突然一人の男が操縦室の中に入ってきます。戸惑う3人の乗員。わけのわからないまま、3人の乗組員は船外に連れ出されます。

実は、直前にトラブルに見舞われたのです。しかし、NASAはそれを公表することができずに、無人のままカプリコン・1を発射させることにしました。5分後、世界中の人が見守る中、カプリコン・1は無人のまま打ち上げられます。

そのころ3人の乗員は飛行機に乗せられ、砂漠に連れてこられます。そこには大きな格納庫があり、その中には、大掛かりな火星の地表らしいセットがあります。そこから芝居をして宇宙中継の模様を映しだすとのことだったのです。

理由は、予算の獲得、世論の意識を宇宙に向けさせるため、プロジェクトの中止は不可能だったいう事実を告げられます。逆らえば、家族の身の安全の保証はないと脅され、セット内で火星探査の芝居を打つことになるのですが…。

よくぞNASAや政府が怒らなかったものだとう思うようなシナリオの映画ですが、試写会で内容を知ったNASAはやはり激怒したらしく、最初は友好的だったのですが、製作協力を拒否したことでさらに話題になりました。

また、アメリカ映画なのにアメリカでの公開がなぜか世界公開よりも1年遅かったことも新たな疑念を生む結果になりました。公開を遅らせた理由は公表されておりません。

もはや映画とは思えないほどの狂気の役作り『マシニスト』

ストーリーもさることながら、役者の役作りの凄さ、本気度を味わえる作品です。まさに命懸けの役作りです。別に激しいアクションや危険なシーンがあるわけではありません。ただただ、まさに身を削る姿に脱帽します。

演技が上手いだけではなく、体を変身させるほどの強烈な役作りができてこそ一流の役者の証なのでしょう。あまりの凄さにストーリー展開の凄さがかすむほどのインパクトを受けます。

人間は追い詰められた感情と罪悪感によって精神だけではなく、姿までもが変化することをヴィジュアルで表現した驚愕のサスペンス。1年間不眠の男が体験した狂気、さらに奇妙な暗号が謎を増幅します。

この奇抜な物語を創り上げた監督は『ザ・コール緊急通報指令室』のブラッド・アンダーソン。サンダンス映画祭、ベルリン国際映画祭などで絶賛されたサスペンス映画を完成させました。

そして、狂気とも思える演技で観る者を圧倒したのは『ダークナイト』シリーズのクリスチャン・ベイル。体重を30kgも減量し撮影に臨む姿は、まさに命懸け。スタッフからは、これ以上の減量は危険だとストップされてしまうほどでした。

不眠症で1年もの間眠れずに、病的とも思えるほど痩せ衰えていく男、暗号めいた張り紙など、その男の周りでは奇妙なことが起こり始めます。

工場で機械工(マシニスト)として働くトレヴァー(クリスチャン・ベイル)は、極度の不眠症で365日間眠っていません。それが原因なのか、体は痩せ衰えて、まさに骨と皮だけの姿です。

ある日、トレヴァーは休憩時間中、車のシガレット・ライターでタバコに点火したとき、アイヴァンという溶接工に話し掛けられます。それ以来、トレヴァーの周りでは奇妙なことが起こり始めます。

トレヴァーは仕事中、アイヴァンに気を取られ間違って機械の電源を入れてしまうのです。それによって、同僚のミラーは機械に手を挟まれ、手を切断する事故を起こしてしまいます。しかし、工場のだれもがアイヴァンの存在に気が付いていないといいます。

彼は事故の件以来、同僚との折り合いが悪くなり、会社を解雇されます。トレヴァーは何者かが自分を陥れようとしていると疑い始めます。日々変化する謎のメモ、そのメモには不思議な記号や書かれているのだが、意味が分からないまま。

トレヴァーはアイヴァンを再び見かけます。アイヴァンの正体を確かめるため乗っている赤い車のナンバーを突き止めるのですが、その車を登録していたのは、トレヴァー自身。混乱したトレヴァーは、アイヴァンを見つけ出し、殺してしまうのでした。

トレヴァーの妄想や幻覚なのか、日々変化する謎のメモ。時刻を示す1:30。ルート666、愛読書の『白痴』、機能しない冷蔵庫、魚の頭など、一見関連のなさそうな不可解な点同士のアイテムが、実はすべて繋がりを持っています。

そもそも、なぜ眠ることができなくなったのか。アイヴァンの正体は?そして、関係なさそうな登場人物の一人一人も実はすべて線で結ばれます。ことの真相を知ったとき、人間の心の弱さ、最後の良心の壁など、疲労感が押し寄せます。

どんでん返しを迎え、人間の心の複雑さを知ることができますが、きっと一度の鑑賞では完全に解読できないと思います。