なにが凄いかといえば、この映画が実話を基につくられていることです。そして、その主人公となる人物は、2015年まで存命していて、最期は自動車事故で車外に放り出され亡くなりました。

監督は『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』のロン・ハワード。そのジャンルは、SFからミステリー、サスペンス、コメディ映画まで幅広く、マルチな才能を持ち合わせた監督です。

『グラディエーター』のラッセル・クロウが実在する人物数学者ジョン・ナッシュを演じます。その妻アリシアをジェニファー・コネリー。

そして、重要な脇役を、ポール・ベタニーとエド・ハリスが演じますが、この二人の存在がこの映画の要ともなります。彼らの役どころに驚くこと間違いなしです。

『ビューティフル・マインド』という、とても穏やかなタイトルですが、とんでもないどんでん返しが待っています。しかし、振り返ってみると、やはりラブ・ストーリーなのであろうという、着地点を迎えるのです。

アカデミー賞では、作品賞、監督賞、助演女優賞、脚色賞を受賞。ゴールデングローブ賞では、作品賞、主演男優賞、助演女優賞、脚本賞を受賞しています。間違いない傑作です。2001年製作。

1947年9月、ジョン・ナッシュは念願のプリンストン大学院の数学科に入学します。彼の研究の目的は「この世の全てを支配する真理」を見つけることでした。そして、一人孤独に研究に没頭します。

そんな彼の唯一の理解者はルーム・メイトのチャールズただ一人。周りから変人扱いされるジョンを、ときは励ましたり、ふざけたりと、ジョンの良き理解者として常に彼のそばについています。

脳裏が方程式で埋まっているジョンは、あるひらめきから「非協力ゲーム理論」という新理論に到達。アメリカの若き数学界のスターともてはやされます。そんなジョンも、やがて恋をし、結婚し、家庭を持ちます。

しかし、類いまれな彼の才能は国家政府に目をつけられ、ジョンはウィーラー研究所と呼ばれる軍事施設に採用されることになります。そこでは米ソ冷戦下での、敵国ソ連の通信の暗号解読という極秘任務に就くのでした。

諜報員バーチャーは、ジョンに雑誌に隠されたソ連の暗号解読を依頼します。ジョンはスパイとして、世界の危機を救うためその極秘任務に全身全霊を込めるのでした。

ときには極秘任務に対するプレッシャーに押しつぶされそうになったり、身の危険を脅かす目に遭ったりと、彼の精神は徐々に追い詰められていきます。サスペンス映画さながらの展開をします。

ところが映画の中盤で、信じられないようなどんでん返しを迎えます。観客も頭の中に「?」をたくさん浮かべたことでしょう。そして、映画の後半では、うって変わってジョン・ナッシュという数学者の功績を称える内容となります。

とにかく、これが実話を基につくられているといことが最も驚きます。人間の思考の深さ、不思議さ、天才には天才の苦悩があるということを悟ることができた傑作です。