ホラー、ビジネス、管理社会など、多くのテーマを含んでいますが、やはりジャンルはホラーに落ち着くという異色の映画です。ホラー・ファンならワクワクしたくなるシーンがたくさん出てきます。

まずは、こんな奇想天外なストーリーをよく思いつくものだと感心します。娯楽作品なので、上から目線で小難しく考えて観ないようにしてください。とても面白く、映画愛、ホラー愛が詰まった作品です。むしろ多くのホラー映画を観てきた人にとっては、良き教材となる映画かもしれません。

バカンスで羽目を外す若者たちが、定番の役割がそろったメンバーで、定番の人里離れた山奥のキャビンで、定番のやってはいけないことをやってしまい、定番の恐怖を体験するという定番中の定番。ホラーの鉄板の流れです。

ですが、面白いのです。この定番を逆手にとって、まさに逆転の発想で意外などんでん返し的ストーリーを展開します。そして、最後の最後にもうひと捻りのどんでん返しをしてくれます。

監督としては、この1本だけ。テレビ・ドラマシリーズの超ヒット作『LOST』『エイリアス』などで脚本家を務めたドリュー・ゴダード。奇妙なストーリー展開も頷けます。

出演者は、他の夏の定番ホラー同様、残虐に殺されていく役どころなので、ギャラの高い役者さんは使えません。よって日本では知られていない方たちが多いです。また、DVDの吹き替え版で桜塚やっくんが声優を務めていますので、ぜひご確認ください。

メイン出演者の中で唯一の有名どころが、『アベンジャーズ』『マイティ・ソー』で、最近売り出し中のクリス・ヘムズワースです。最近も大作への出演が相次いでいます。

そして、そんな若い役者さんの中で、最後の最後に大物の女優がゲスト出演していますので、こちらもぜひお楽しみにしていただきたいと思います。この人の登場もある意味どんでん返しでした。

夏のバカンスを奥深い森のキャビンで過ごすことになった若い男女5人、定番です。行く先から、ハイになる者がいるのも定番。途中のガソリン・スタンドでは、意味ありげな愛想の悪い老人が意味深に対応するのも定番。今まさに何かが起こるに違いないというホラーの王道を進みます。

やっとたどり着いた森のキャビン。見るからにヤバい、そのたたずまいもホラーの定番。彼らはそのキャビンで地下室を発見。行かなければいいものを、やってはいけないことをやってしまうホラーの定番。そこで古いノートを見つけます。そして、そこに書かれている呪文を(…やってはいけないのに)唱えてしまいます。

定番通り調子に乗ってその呪文を唱えたことで、彼らは何者かの目を覚ましてしまうのです…。彼らが起こした者は、死霊だったのです。そして、仲間の一人が無残に殺されてしまいます。

アナタは「辞めとけよ」と心の中で訴えるはずです。でも、定番通りやってしまい、案の定。悲劇は起こります。これほどまでに観る側の予想がズバズバ当たる映画も珍しいはずです。しかし、予想ができるのはこの辺りまで…。

実は観ているアナタは初めから騙されていたのです。この映画、こんなに単純なものではありませんでした。ストーリー二転三転し、とんでもない阿鼻叫喚の世界に巻き込まれ、救いようのない結末を迎えます。

これぞ、ホラー・ファンのため王道のホラー映画といえます。