この作品は、テレビドラマ化もされていますので、ご覧いただいてストーリーをご存知の方も多いかと思います。

とてもドラマチックなタイトルですが、ジャンルでいうのは、難しいですが、悲しきSFといったところでしょうか。純粋な日本人であるイギリス人のカズオ・イシグロさんの原作です。

監督はマーク・ロマネク。2010年製作のイギリス映画です。次回作の紹介でここが意外と重要です。キャストは、介護人キャシーを演じるのが、キャリー・マリガン。キャシーの子供のころからの友人をアンドリュー・ガーフィールドが演じます。

日本ではあまりお馴染みではないかもしれませんが、キャリー・マリガン…とってもキュートな日本人好みの雰囲気を醸し出しています。どことなくトリンドル玲奈さんに似ています。

そして、『スパイダーマン』シリーズでお馴染みのアンドリュー・ガーフィールド。この作品では、一切のアクションは観ることはできません。

オープニング・シーンで、手術台に載る男性。そして、ガラス越しにそれを見守る女性。場面は、回想シーンに変わります。

イギリスの田舎町にあるようなのどかな小学校のような場所。でも、そこは普通の小学校ではなく、何もかもが普通なのに何もかもがおかしい場所、ヘールシャム。何も知らない子供たち、帰る家もなくヘールシャムで寝泊まりする。

毎週のように行われる健康診断、保護官と呼ばれる教師の不思議な振る舞い、敷地の外には一切出ることはできない。そして、極端に図画工作に力を入れます…ちょっとずつ変なのです。

観ている側も何か違和感を持ち続け観ます。ところが物語の前半で、どんでん返しが起きてしまうのです。若い女性の先生が子供たちの前で彼自身の存在の意味を説明してしまう。

観客もここで、唖然としてしまうのです。この子たち…。タイトルからは、想像もつかないような恐ろしい物語が展開します。グロテスクなシーンは全くありません。むしろほのぼのとした田園シーンだったり、寒々とした海辺のシーンだったり……でも、怖いのです。もの凄く怖いのです。

成長した彼らは、自分たちの存在の意味を理解しています。しかし、それは本当は望んでいるものではありません。それでもなんとか逃れる方法も考えます。

そして、子供ころヘールシャムで行われていた図画工作の授業の意味を知ったとき、キャシーとトミーは、愕然とします。観ている観客も同じように愕然とします。

そして、最後にオープニングのシーンに戻ります。オープニングのときとは全く別の感情でそのシーンを観ることになります。これがなんとも悲しくもあり、怖いシーンに見えることか!

この映画のどこがSFで、どこが怖いの?と思われるでしょうね。ネタバレになりますので、書けませんが、人の心をお持ちであれば、観終わったあとに、あぁ怖いわぁ、となるはずです。

この映画、結末のどんでん返しというよりも、中盤で大きなどんでん返しが行われます。しかし、その事実を知ってからのストーリー展開のために、観る側が常に登場人物を見守るように観てしまうのです。

テーマ自体が中盤でひっくり返されるため、子供時代に図画工作を熱心にさせていた理由がかすんでしまいそうですが、実はその理由の方がある意味どんでん返しだと思います。もうなにもかも救いの道がない!っていう、諦めのどんでん返しでした。