ハリウッドでリメイクまでされた韓国映画なのですが、原作は日本のマンガ。観たことを後悔するほどの後味の悪い作品です。悪い映画ではないのです。凄い映画なのですが、どうもずっしりと嫌な余韻が残ってしまう内容です。

ところどころに目を覆いたくなるような残虐なシーンもあります。しかし、そういった視覚の不快さもさることながら、だれも得をしない、だれも勝つことのない人間の不条理を見せつけられ、観終わったあとに残る疲労感。少し覚悟をしてご覧ください。

週刊漫画アクションで掲載されていた土屋ガロンと嶺岸信明の『ルーズ戦記オールドボーイ』を2003年に韓国で映画化、2013年にハリウッドでリメイク映画化したものです。原作と映画版の動機付けに大きな違いがあります。

また、映画では韓国版、ハリウッド版のそれぞれに多少の差異はありますが、大筋はほぼ同じ内容です。どんでん返しは、事の真相なのですが、ただし、ラストは、両者それぞれ異なります。どちらがいいのか、悪いのかは観た方の主観でいいと思いますが、どちらも後味はよくありません。

監督は、韓国版を【復讐三部作】、【人間でない存在の三部作】のパク・チャヌク。ハリウッド版を『インサイドマン』のスパイク・リーが努めます。

主演は、韓国版を『悪魔を見た』『シュリ』のチェ・ミンシク。ハリウッド版を『ノーカントリー』『ブッシュ』のジョシュ・ブローリンが演じます。

長年監禁されてきた男がその理由を探るため、復讐を遂げることを決意し、謎の解明をしていくという展開です。いったいなぜ長い年月監禁されてきたのか、殺されることもなく、ただ監禁され時間を奪われた男の復讐劇です。

そして、この映画の怖さは、人間の記憶の曖昧さをも訴えていることです。自分にとっては、気に留まることのない何気ない言動が人によっては恐ろしい結末を生んでしまうこともあることを訴えています。しかし、本人はそんなこと記憶にもない。そう、ただ単に忘れてしまっているのです。

泥酔状態のある夜、主人公の男は、行方不明になります。気が付くと、ホテル一室のような部屋。そこにはベッド、テレビなど、生活するには不自由のない部屋。ただし、出ることはできません。監禁されてしまったのです。

訳も分からず監禁された年月は、韓国版は15年、ハリウッド版は20年。そして、ある日、何の前触れもなく突然解放されます。ボストン・バッグに詰められ気が付くと、見知らぬ草原。解放されたのです。

男を監禁した首謀者は、「なぜ監禁されたか、5日間で答えを出せ」とメッセージを伝え、解放された男にヒントを与えていきます。そして、謎が解けたら自分が死に、解けなければ殺すというゲームに巻き込まれることになります。

わずかなヒントを頼りに、主人公は徐々に真相に近づいていきます。そして、事の発端は高校時代にまでさかのぼります。首謀者の姿が見えてくるのですが、しかしそれでも、長年監禁されていた理由にはたどり着きません。なぜ15年(20年)なのか…。

首謀者にたどり着いたとき、彼は主人公に言うのです。「なぜ監禁されたか?の質問は間違っている。なぜ解放されたか?と質問するべきだ」と…。

すべての真相が分かったとき、考えたくない残酷などんでん返しが待っています。ご家族、特にお子様とはご一緒に観ないようにしてください。