なぜか英語の邦題がついたスペイン映画です。第11回東京国際映画祭でグランプリに輝いたサスペンス映画でありながら、前半は一人のストーカーの女に運命を狂わされるサイコ・スリラーでもあります。

ストーリーは大きく2つに分けられます。前半はストーカー女の恐ろしい執念を描き、後半では悪夢か現実か分からない不思議な体験をする主人公のジレンマを描きます。

また、トム・クルーズ主演で『バニラ・スカイ』というタイトルでハリウッド・リメイクされています。両作品ともストーリー展開はほぼ同じです。話題になったのが、ペネロペ・クルスが同じ役で両作品に出演していることもありました。

ストーリーそのものは同じなのですが、細かいリテールなど、やはり今作の方がヨーロッパらしい繊細さが表現がされています。ぜひ、両作を見比べていただきたいと思います。

スペイン映画なのでスタッフ、キャストとも、日本人に馴染みのある方は多くありません。唯一、ペネロペ・クルスがこの映画をきっかけにハリウッド・デビューをし、大女優の仲間入りをすることになりました。

監督はアレハンドロ・アメナバル。今作のあとに、ホラー映画『アザーズ』の監督をしています。『アザーズ』では、製作にトム・クルーズが参加、主演をトム・クルーズの元妻ニコール・キッドマンが主演を務めています。

主演の金持ちのハンサムな独身貴族セサルの役をエドゥアルド・ノリエガ。スペイン、フランスを中心に活躍中です。ハリウッド版では、今役をトム・クルーズが演じます。

セサルが一目ぼれした美女ソフィアをペネロペ・クルスが演じます。オリジナル版、ハリウッド・リメイク版ともに演じるという、珍しい配役を経験します。同じ役柄なのですが、リメイク版の方がのびのびと演じているようにみられます。

さらにハリウッド版では、ストーリー女の役を、『チャーリー・エンジェルズ』シリーズのキャメロン・ディアスが演じています。狂気に満ちた演技で観た側を震え上がらせます。

刑務所内の精神病棟で、セサルは担当の精神分析医と面談するところから始まります。そして、ここまでの経緯を語り始めるのでした…。

セサルは親の遺産を相続したプレイ・ボーイ。日々自由な恋愛を楽しみ贅沢な生活を送っています。今、付き合っている女性はヌーリアという嫉妬深い性格。

日々贅沢に暮らしているセサルは、誕生日に自宅でパーティーを催します。そこに友人が連れてきたソフィアという女性に一目惚れします。ヌーリアはそのことに嫉妬し始めます。ヌーリアはセサルを誘って、ドライブに出かけます。

そして、ヌーリアは二人が乗った車を暴走させ、心中を図ります。暴走した車は崖から転落します。ヌーリアは死んでしまいますが、セサルは命が助かるのですが、顔には大きなケガを負ってしまいます。

事故でセサルの人生は一変します。白いマスクを身に付け、醜くなってしまった彼の元からは友人たちが去りはじめ、ソフィアからも冷たくされていきます。絶望したセサルは酔いつぶれ、路上で寝てしまうのでしたが、目が覚めると…。