撮影期間わずか33日間、インディーズ映画並みの予算はたった500万ドル。しかしながら、サイエンス・フィクションとしては、あくまでも理にかなった現実的な脚本として、NASAも注目しました。

低予算上、登場人物及びセットを最小限に抑え、CGを多用することなくミニチュアを用いるなど涙ぐましい撮影。しかし、月、宇宙の研究を重ねることで、チープな演出とならず、リアル感のある作品に仕上がっています。

監督はダンカン・ジョーンズ。先ほど亡くなられたロック歌手デヴィッド・ボウイの実の息子です。今作が長編デビュー作となります。この作品でイギリス・アカデミー賞新人賞受賞、作品賞ノミネートなど、数々の賞を受賞します。

そして、この後、『ミッション:8ミニッツ』『ウォークラフト』を立て続けに監督します。『ミッション:8ミニッツ』はどんでん返し映画として面白い作品となっています。

完成当時は、劇場公開をせず、直接DVD販売の予定だったのですが、各映画祭で好評を博し、急きょ劇場公開作品となりました。

主演は、『チャーリーズ・エンジェル』『コンフェッション』のサム・ロックウェル。登場人物はほとんど彼一人のため、全編を通じて彼の一人芝居となっています。

また、月面で一人取り残されている主人公を補佐する人工知能ガーディの知的な声を、『セブン』『ユージアル・サスペクツ』のケヴィン・スペイシーが務めます。

低予算映画とは思えないほどのリアルで、深いストーリーを堪能できる作品に仕上がっています。そして、近未来ありえるかもしれない余韻と怖さを与えてくれます。

地球から遠く離れた月で、たった一人で仕事に従事する男が体験する奇妙な現象に遭遇するSFスリラー。真実を知ったとき、主人公とともに観客はうなだれることになります。

サム(サム・ロックウェル)は地球で必要なエネルギー源ヘリウム3を採掘するため、ルナ産業との3年契約のためたった一人で月面基地サランで滞在することになっています。衛星に故障が生じ、地球との交信もできず、孤独にさいなまれています。話し相手は、人工知能ガーディのみ。

仕事内容は、燃料を採掘し、ポッドに詰め地球に送るという単調なものです。しかし、その任務も残り2週間となります。地球に戻ることを拠り所に仕事に従事しています。ところが、サムはそのころから体調を崩し始めます。

それでも頭痛やめまいが起きながらも仕事に従事します。そして、月面ローバーを運転していたとき、事故を起こし、気を失います。目を覚ますと基地内の診療室だったのです。ところが、たった一人のはずの基地に別の人間がいることを知るのです。

なんとその男は、自分と同じ顔の人間…。幻覚なのか?現実なのか?自分の身に何かが起きているか?しかし、男は話すこともできる、幻覚のようには思えない。そして、サム自身よりも若く気が短い。彼は自身のクローン?しかし、なぜ?

サムはますます体調が悪くなりながらも、今起きていることが現実か、空想なのかも分からないまま、謎を解き明かすため、基地内を調べ始めることに…。やがて、予想が覆されるどんでん返しを迎えることになります。