完全犯罪とは、犯人が捕まらないことではなく、犯行が行われたことさえも気付かれないことをいいます。そして、その事実さえも闇に葬られていってしまう犯罪。ともすれば、日常の中に潜んでいるかも知れない凶悪犯罪。

その犯罪をこの世のモノでないものが、生ある者に伝えるとすれば…。そんなホラー・サスペンス映画です。ジャンルでいえばホラー映画です。

監督はマチュー・カソヴィッツ。フランス人で俳優業、監督業をしています。日本ではあまり知られていませんが、フランス映画『クリムゾン・リバー』で監督を務めています。今作がハリウッド・デビュー作となります。

出演者はなかなか豪華な顔ぶれです。正直、使いどころがもったいない感じもします。主演のミランダを『X-MEN』シリーズ、『キャットウーマン』のハル・ベリー。『チョコレート』では、アカデミー賞主演女優賞を受賞しました。

そして、脇を固めるのが、『アイアンマン』シリーズ、『シャーロック・ホームズ』シリーズのロバート・ダウニー・Jr.。ミランダをフォローする精神科医を演じます。もう少し活躍するシーンを見たかったのが正直な感想です。

そして、『オープン・ユア・アイズ』『バニラ・スカイ』のペネロペ・クルス。女子刑務所に収容されている囚人を演じています。ハル・ベリーとの共演で話題になったのですが、こちらも使いどころが物足りなさでいっぱいでした。

犯罪心理学者のミランダは、夫が監督している女子刑務所の精神病棟で勤務しており、日々患者の心理分析を繰り返しています。そして、その患者の中にクロエ(ペネロペ・クルス)という殺人犯がいます。彼女は刑務所内で悪魔に襲われると告白し、ミランダを悩ませていた。

ある嵐の夜、ミランダは橋の手前で若い女性をはねそうになり、事故を起こしてしまう。そして、精神病棟の一室で目を覚ますのです。主治医は同僚のピート(ロバート・ダウニー・Jr.)。ミランダは合点がいかない。

そして、ピートから自身が夫を斧で殺害したと聞かされ、ここに収容されたことを聞くのです。しかし、そのような記憶はいっさいない。やがて、ミランダの身の周りでは奇妙なことが起きるのです。

ミランダは決して霊の存在は信じない。しかし、彼女の身の回りで起きることは尋常では考えられないことばかり。そして、霊はメッセージを残すのです。“Not Alone(一人ではない)”…そのメッセージの意味は?

刑務所の脱走に成功したミランダは、殺害現場となった自宅へ向かいます。そこで知った事実は?さらにミランダは農具小屋へ導かれ、恐ろしい真相を知ることになるのです。

やがて完全犯罪が明るみになり、結末が二転、三転します。ツッコミどころもあります。ラストシーンでミランダとクロエが街を歩いているのですが、ミランダは釈放されているの?いくら事件の真相が分かったとしても、それは…?なにか腑に落ちない感じを受けました。

また、クロエを襲っていたタトゥーの男の存在、なぜクロエなのか?そして、ミランダを襲った少女の霊はなぜあれほど凶暴だったのであろう?など、伏線が未回収のままでの終わりでした。

しかし、この映画をどんでん返し映画と紹介させていただいたのは、犯罪の意外な真相や解決法ではなく、ミランダの身に起き始めた事実なのです。ミランダは一連のできごとで…。これはご覧いただいてお確かめください。

また、せっかくのハル・ベリーとペネロペ・クルスの共演と話題になりましたが、その絡みはファンとしては物足りなかったのも少し残念でした。ペネロペ・クルスがもっと事件に関わるようにしてほしかったですね。