こちらの映画、数あるどんでん返し映画の中でも、珍しく最後で涙を誘うもの。そして、この一本の映画の中に、いくつかのテーマがあるのです。

父子、家族、ベトナム戦争、帰還兵、聖書、夢と現実、人体実験、幻覚、ドラッグ等、この1本の映画の中に多くのテーマが潜んでいます。

タイトル『ジェイコブス・ラダー』には三重の意味があります。主人公ジェイコブスの階段であり、ベトナム戦争で使用されたかもしれない禁断の興奮剤であり、日本人にはピンと来ませんが旧約聖書のヤコブの梯子の意味をも持ち合わせています。

1990年製作。監督は、『フラッシュ・ダンス』『ナインハーフ』『危険な情事』でお馴染みのエイドリアン・ライン。

キャストは、主人公ジェイコブに『ショーシャンクの空』のティム・ロビンス。その息子にマコーレー・カルキン。まだ、『ホーム・アローン』に出演する前の幼いカルキンくんを観ることができます。

残念ながら、日本ではあまり興行成績は芳しくありませんでした。あまり知られている映画ではありません。配給側も、テーマが複雑で宣伝も難しい映画なのですね。

ジャンル分けは、非常に難しい映画です。前述しましたように、多くのテーマを抱えています。スリラーであり、サスペンスであり、ホラーでもあり、戦争映画でもあります。家族愛を謳った映画とみることもできます。この映画は、観た人がご自分でジャンルを決めるのがいいのかもしれません。

ストーリーも非常に複雑です。オープニングは、ベトナム戦争の真っただ中。ジャンルでくつろぐ、ジェイコブと仲間たち。そこに突然銃撃戦が始まる。奇襲を受け、ジャングルの中を逃げ惑うジェイコブは突然腹部を刺されます。

気が付くと、地下鉄の車内。ベトナム戦争時の夢。駅を通りこし、慌てて次の駅で降りようとするのだが、乗っている乗客の様子が少し変。

ある日、ジェイコブの前にベトナムでの戦友ポールが現れ、誰かに追われていると打ち明けます。次々と戦友が集まり、全員がおかしな幻覚を見るといいます。そして、ジェイコブたちは命を狙われだします。

そして、ある男がジェイコブを救う、その男は「ある秘密を知っている」「あの日のジャングルの奇襲は敵の攻撃ではない」など意味深な言葉を残します。やがて夢と現実が交差するような感覚を覚えるのだが…

さらに本編にときどき現れる怪物のようなモノ、数秒だけのベトナムの回想シーンのカットなど、不思議なシーンが多く、悪魔絡みのオカルト映画にも思えます。

この映画で本当に泣けるの?と心配になるでしょうが、これ以上は、ご自分でご覧いただき、ご確認して欲しいと思います。大どんでん返しが待っています。

DVDのパッケージは、決して率先して手を伸ばしたくなるようなものではありません。どちらかというとオカルトチックな雰囲気を醸し出しています。

しかし、この映画は親の立場、特にお父さんという立場の男性にぜひ観ていただきたいと思います。最後のどんでん返しで涙をたっぷり流してください。